STORY
「何を見ても何かを思い出す」
小説家ヘミングウェイの短編小説に「何を見ても何かを思い出す」というタイトルがあります。とても示唆的で、おもしろい言葉です。ふと目に止まった何かを見て、思い出すものやこと、そして人。
「これ、あの人が好きなやつだ」
「あの子、前にこれくれたな」
「これ、欲しいって言ってたな」
贈り物は、贈る相手を思う時間そのものだとよく言います。
その人は、何を大事にしていて、どんなことを考え、どんな言葉や態度で表現し、伝える人でしょうか。その人が喜ぶだろう、自分が気に入ったものと出会う瞬間。それは贈る相手だけでなく、自分にとっても大切な瞬間です。
絵本には、生きるうえで大切にしたいことがつまっています。絵本を贈ることは、自分の大切と相手の大切が重なる場所を見つけることです。そうした時、自分を中心とした円が広がり、他の円と交わり、重なったところは濃くなります。
だから贈り物をするのは、相手が喜ぶからだけではなく、自分のためでもあるのかもしれません。時にシンプルに、時に大胆に、絵とことばを使って世界や人間の核心を描く絵本は、贈る楽しみを最もよく味わえるものなのかもしれません。
山口博之
RAINBOW IN YOUR HAND
四角く並ぶ見覚えのある7つの色。めくれどもこの7色が続きます。これだけ聞くと「つまんない」と思ってしまうかもしれません。ですが、ひとたび本を手にして、グッと曲げながら連続で本をめくっていくと…、そこには“虹”が現れるのです。残像を利用して手の中に一瞬の虹が生まれる、現象的でロマンチックなフリップブックです。
著者:川村真司
出版社:Utrecht
うるさく、しずかに、ひそひそと:音がきこえてくる絵本
「音は耳以外でも聴くことができる」と教えてくれる、ウクライナ出身のアーティスト夫妻による“目で聴く”科学絵本。銀や蛍光色を使ってにぎやかに、鮮やかに描かれたイラストは、音/音楽がどこで生まれ、私たちがどう聞いているかを直感的に伝えてきます。ビッグバンからお腹の中のちいさな命まで、私たちと世界を取り巻く音を感じてください。
著者:ロマナ・ロマニーシン/アンドリー・レシヴ
翻訳:広松由希子
出版社:河出書房新社
FROM AFAR IT WAS AN ISLAND
「遠くから見るとそれは島だった」、そんなタイトルがついた写真絵本。地球が大きなひとつの石だとしたら、私たちが見つける石はちいさな地球かもしれない。石は発見する世界や海や川による彫刻であり、ひとつとして同じものがない個性的なアートピースだとブルーノ・ムナーリは言います。ユニークだけど本質的なものの見方がここに。
著者:ブルーノ・ムナーリ
出版社:Edizioni Corrain
Michi
Junaidaの絵は、1枚ごとに無数の物語が潜んでいます。そんな絵が集まった絵本は、終わりも始まりもない生きた物語が詰まっています。道はいつも過ぎていくもので目的地ではありません。歩き、走り、立ち止まり、また歩く。近道をしても遠回りをしてもいい。いづれ少年と少女は真ん中で出会うのだから。歩き、眺めることを堪能する一冊。
著者:junaida(ジュナイダ)
出版社:福音館書店
プロフィール
山口 博之HIROYUKI YAMAGUCHI
1981年仙台市生まれ。立教大学文学部卒業後、
https://www.goodandson.com
公開日: 2022/3/25